「おはよ、美矢。前にも思ったんだけど、案外朝早いよね」

「おはよ。案外ってどういう意味?まあ夜早いし自動的に」


猫背で胡座をかいた美矢は、その白い肌に映えるような赤のリブのタイトなカットソーに黒地に赤と白の花柄のミモレ丈のスカートを見に纏い、手馴れた手つきでギターを調弦している。

早い事で、美矢が来て2週間ほど経った。この期間で美矢は、武明先生に引っ張り回されて各所に挨拶回りし、子供たちに大人気の『ギターのお姉ちゃん』として既に島中で認知されていた。

マイペースをあの年中お祭りみたいなテンションの人にかき乱されぶつくさ文句をいいつつも、子供は嫌いじゃないらしく、子供たちに囲まれながらリクエストされた曲を弾いたり、興味のある子にはギターを教えたり、子供たちに良い影響を与えてくれている。


「今日は何から歌ってくれる?ギターのお姉ちゃん」

「ちょっと、やめてよ」


む、と口をへの字に曲げて見上げる美矢に喉を鳴らして笑っていると、やれやれ、というように鼻息を漏らした彼女は、僕から目線を外してそっと息を吸い込んだ。