このクリアな青の世界に、美矢の白い肌、白い服、対照的なくすんだグレーブラックの髪が、全てが風になびきながら鮮明に映えている。

生魚を触ったことがない、という美矢はもちろん釣りをするのも初めてで、武明先生に鬱陶しそうな顔をしながらも釣りのやり方を教わりつつ、それでもどこか初めてのことに楽しそうに釣りをやっている。

僕の方は、目当ての真鯛は二人に任せ、早くも小魚を何匹か釣りつつ、このゆったりと流れる島の独特な時間を久しぶりに体全体で楽しみ、子供たちのために働く日常から少しだけ、自身の全てを癒していた。


「とらとたけちゃんは学校の先生なんだね。たけちゃんはなんかしっくりくるけど、とらは意外」

「ああ、うん。この島のことは好きだし、大学受験のタイミングで僕がお世話になった担任の先生がそろそろ定年って聞いてたから。将来の夢とかもなくて、大学で小学校教諭の資格取って帰ってきたんだ」


自分で聞いたくせにふーん、とそれだけリアクションしてまた釣りに夢中になり始める美矢は、無垢な猫そのものだ。しかし、そのマイペースさに苛立ちは決して立つことなく、このゆったりした時間に美矢の空気感は合っていて良い、とすら思える。