そうして主に優がマシンガントークをし、美矢がジンギスカン鍋を吸い込む、りょーちゃんにとってはとんでもなく大変な一晩を終え、翌日。

昨日より少し遅めの朝を迎え、美矢はすっかり乾いたMV用の服に再び手を通し、朝から縁側でギターをかき鳴らす。


「おお、そんな曲も弾くんだねー」


自家栽培の野菜への水やりをしている僕の代わりに美矢の隣に座った優は感嘆の声をあげ、耳を傾ける。


今日の美矢の1曲は、最近出てきたバンドの、ギターのフレーズが難しいとされる流行りの曲だ。


エッジの効いた、少しブラックミュージックのような独特の世界観と、高音の男性ボーカルの透き通るミスマッチな声が良い渋さを出すその曲を美矢が歌うと、何だかまた違った狂気を感じる。勿論、良い意味で。


「いいなー、毎日聴けるんだもんなーとらちゃんは」

「羨ましいでしょ?今日だけだからね、その特等席譲るの」

「はーいはいはい。独占欲強いなぁ」


いつもは僕が座っているそこは、今日は優に譲ってやるけど明日からはまた僕のものだ。
独占欲、といわれるとそうかもしれないけど、そこだけは譲らない。

優の軽口をスルーして野菜に目を向ける。そろそろトマトと胡瓜が収穫の時期だ。りょーちゃん特製ドレッシングで、洗いたてを美矢と頂こう。