奥では白い英語プリントのTシャツにベージュのキュロット姿の千明が海を眺める横顔をケンゴが撮影している姿が見える。

彼女が小さい頃からの姿を見てきたから特別そうとは思ってこなかったけど、確かに美矢や優の言う通り、千明は美人かもしれない。
手足もすらりと長いし、美矢が来てからの1ヶ月と少しで背も伸びて、美矢と同じくらいの身長になっている。


お父さんが危険を伴う漁師を一生懸命にし、お母さんも島の外に朝早くから仕事に出ている家庭環境で、幼い頃から貴人を守ってきた千明は他の子よりずっと大人びて聡明だ。

その聡明さに、成長期で美しさと、思春期の陰りが見え始めていて、目を見張る容姿になりつつある。

優じゃないけど、確かに俳優に向いていそうなんて思わないでもない。


永遠のようなゆっくりした時間の流れるこの島だけど、千明も、貴人も他の子も急激に成長していて、変化は必ず起きている。


じゃあ、僕の時間も変わっていくのかな?……いや、たった1ヶ月でこんなにも変わったじゃないか。
美矢との時間は永遠じゃないのか?この先一生続くのか?

考えたところで不毛なのに、急に不安の波が押し寄せる。心地よすぎたこの時間が、終わる時が来るんじゃないかと。