きっと、月が綺麗な夜に。

「猫ちゃんの言う通り。あんた、千明?は、凄い素材な気がする」

「えっと、優、さん、ありがとう」


いつの間にかクリエイター班から離脱してこちらに来た優が、千明を上から下まで眺めながら言い放つ。


「何年生?ケンゴちゃんよりは子供だよね!中2くらい?」

「いえ、あの、まだ小5で……」

「小5!?大人びてるねー、スタイルも良いし、顔も綺麗だし。……芸能界、興味無い?ボク、いつでも大手事務所紹介するよ?」


よほど千明を気に入ったのか、優のマシンガンが止まらない。
たじたじの千明を守るように「落ち着け」と優にチョップをかますと、ぷう、と頬を膨らませた優はその場に胡座をかいた、


「だって、ボクが知ってるこの島には猫ちゃんみたいな逸材も、ケンゴちゃんみたいな天才くんも、千明みたいな原石もいなかったのに!何この宝島!勿体ない!」

「大学の時毎年この島に夏休みとか泊まりに来る度、なんも無いって発狂して4日くらいで帰ってたよね」


この島はのどかで、猫が多くて、買い物には不便だし、変わらないゆったりとした時間の流れる場所のはずなのに、いつの間にか優にとっては宝島になっていたみたい。

子供みたいに膨れた優の顔を見て、千明は優に褒められた、確かに美しく大人びた、でもまだ年相応の子供の顔を優しく崩した。