きっと、月が綺麗な夜に。

「でも、信じてみる。だってケンゴはいつだって、なんでもないあたしの日常を魔法に変えてくれる力があるから」

「そうだね。あんなに一生懸命楽しそうに笑う顔、君が来てから見れるようになったわけだし」

「……とらのばか。そういうことってストレートに言わないでしょ」


鼻を真っ赤にし、照れて困ったように口をうにゃうにゃと動かし、2つのビー玉をキョロキョロと動かした美矢は、その顔すら僕に見られるのが恥ずかしいと言わんばかりに俯いた。

20センチは小さい彼女のつむじしか見えない姿がどうしようもなく愛おしい。

そっと頭を撫でると、サラサラの黒髪の柔らかな感触を感じて、胸が少し苦しくなった。


「そろそろ行くよー!そこ!イチャイチャすんな!」

「してない!……はは、すぐああやってからかってくるんだから。行こう、美矢」


「うん」と小さく頷いた美矢と共に呼ばれた方へ歩けば、そこにはゆったりと、光の泡がふわふわと舞う世界が広がっている。

守っていきたい。この島のこの時間を。この光の泡が割れてしまわぬよう。

闇から押し返すのは、美矢じゃなくて僕の役目なのかもしれない。