子供たちの撮影を始めて30分くらいたった頃、主役達が遅れて揃ってやって来る。


「……はよ」

「おはよう。珍しく寝坊したね、君」


まだ寝ぼけ眼でいつもより割増で猫背の美矢は、レースのフリフリが首についたパフスリーブのシャツに、ビックシルエットのヒザデルパンツとぺたんこのサンダルと、今日は更に緩い格好でやって来た。


「美矢ちゃんが起きるまで待ってたら遅くなっちゃった」

「せんせーおはよ!」


「はい、おはよう。千明、貴人」


そして、ケンゴがご両親に土下座をしてまで頼んだ今回の美矢と対象の主人公としてやって来た千明と貴人は、美矢のやわっこそうなその手を繋いで僕に声をかけた。


「おー、来た来た!ちーちゃん!たかぼう!一緒に遊ぼうぜ!」


そんな2人に気づき、頬に既に砂埃を付けたケンゴが大きく手を振っている。


「あれ?何か撮影してるんじゃなかったの?」

「ああ、そんなに気負わなくて大丈夫だよ。君達が気負わなくても、ケンゴに全部任せて楽しみな」


聡明な千明は何が行われているかよく分かってない貴人とは違い少し表情が強ばっていたが、向こうの子供たちチームの姿を見てそれが綻ぶ。

そして、美矢の手を離し「行こう」と貴人の手を取ると、仲良くそちらへとかけて行った。