ケンゴの頑張りで段取りや構成が着々と進み、撮影1日目は初めて曲を聴かせてから1週経った土曜日の明朝からスタートした。

今日は美矢以外のカットを、明日は美矢のメインカットを撮影する予定の幼き監督は、自分と、その師匠をメインに色々準備や出演者の子供たちと和やかに話している。

僕も引率兼撮影スタッフとして見守る中、一際派手なガリヒョロの奴が、ケンゴへと歩み寄った。


「へえ、この子が旅猫のディレクター兼総合プロデューサーね。凄いねぇ」


「ふぁっ……!ふぁふっ!」

「はは!かわいー!見た?このリアクション!」


それは宣言通りスケジュールを調整してMV撮影の見学へと来ていた優で、優の派手だがスレンダーで美しい見た目とビッグネームにケンゴはガチガチだ。


「ケンゴ、こいつ綺麗だけどお兄さんだから騙されたらダメだよ」

「お兄さん!?ぼえっ!?」


勘違いしてドギマギしてる思春期の少年に、僕はそっと教えてやる。

ケンゴは信じられないといった顔で僕ら男性の共通点である股ぐらの方へ目線を向けた。


「あら、流石思春期。見る?」

「見せるな。性自認が男なだけで付いてないでしょ」


僕らの会話にケンゴは目を白黒させる。まだまだ14歳の少年には優はちょっぴり難しいようだ。