クリエイターとしての特性か、はたまた若いからか、勢い良く頭の中をラフ画で起こしたケンゴは、それからの行動も早いものだった。


その日小一時間も満たない時間の中でラフを描いたケンゴは足早に家を飛び出すと、どうやら自分の思い描いた作品を作り出す為に、島中を駆け回って交渉とアポイント、更には素材の撮影まで行っていたらしい。

僕が掃除を終え、りょーちゃんに頼まれた食材を入手しようと商店街に行った時には、ケンゴが声がていた話や撮影に協力した話、美矢のメイン撮影の日楽しみにしている、など、子供から大人まで色んな人に声がけられた。


映像が配信されるわけだから難色を示されても仕方ない内容の筈なのに、その話を振ってくる皆ガ皆穏やかな顔なもんだから、ケンゴの交渉力が凄いのか、はたまた人徳なのか、この島の住民が平和ボケしているのか。

兎にも角にも、感心して言葉にするのは難しいといった現状だ。


そんな中でも渋りに渋って、ご両親にまで土下座してケンゴがどうしても頼み倒した美矢とは別視点の主軸となる出演者がなんとか決まったよう。

その子供たちとは、僕と美矢にとってターニングポイントとなったきっかけのあの子たちだ。