朝から絶好調な美矢は、予想通りの良い食べっぷりでりょーちゃんのフルコースをどんどん平らげていく。


「やっぱり美矢の食べてる姿最高だなあ。作りがいあるってなもんよ」


その姿を飽きもせずいつも嬉しそうに眺めるりょーちゃんの顔は父性に溢れていて、以前にも増して父親感が増した気がする。


「美矢のやりたかったことは形に出来た?」

「ん?んぐ……出来たよ。あとでりょーちゃんにも聴いてもらうね。とらがね、ギターとコーラス入れてくれたんだよ」

「ちょっと美矢、しーっ!それは秘密」


りょーちゃんの問いに慌てて口の中を空っぽにして、子供みたいに嬉しそうに話し出した美矢になんだか恥ずかしさが込み上げて、子供を叱るみたいに注意するも、後の祭り。

涙脆い飯炊きおじさんは、その一言でぶわあ、といとも簡単に泣き出して、ものの数秒で嗚咽を漏らし始める。


「そうか、とら、歌ったのか、そうか」


長いこと育ててくれたりょーちゃんは、もちろん僕の事情も知っているし、多分、僕が人前で歌えなかったのも分かっていただろうから、こうなるって分かっていたのにな。

泣かせた本人のはずの美矢は、どこか誇らしげに微笑んで、あさりの味噌汁を音を立てずに飲み始めた。