曲を聴き終えた美矢は、まるで全身の毛を逆立てた猫のようにぶるぶる、と体を震わせると、僕と優の顔を、感情が言葉にならない代わりに何度も見比べる。


「どう?超大作じゃない?」

「ほんとにね。君には感謝してもしきれないよ、優」


伝えたいことがある、ただそれだけで突っ走った美矢にも、最大の力を込めて形を作り上げた優にも、そして、1番何も分からないながら出来る限り力を尽くせた自分自身にも、敬意を表したい。


「……なんて言うか、シンプルに、感動した。心動いたわ。想いを形にするのって、凄いことだね」

「初めてのことなのにこんなにスムーズに出来たのは猫ちゃんの凄さだと思うよ。またすぐにでも一緒にやろう。猫ちゃんの曲を他の奴に作らせるなんて絶対嫌だし」


すっかり美矢の専属プロデューサーになった気持ちの優は、茶目っ気たっぷりに笑ってみせる。

そんな優に、美矢は困ったように眉を下げ、後頭部をポリポリ、とかいた。


「しばらくはいーや。生み出すのってめちゃくちゃに疲れる」

「えー!そんなこと言わずにさあ、せめてひと月に1回とか!ね!」


強めに押してくる優にたじたじの美矢を見て、なんだかようやく心が落ち着いて僕も笑みがこぼれる。

マイペースな美矢が定期的にこの作業をするのは無理だろうな、なんて思いながら。