優のアドバイスを取り入れながら3テイク目で満足のゆく音を取れたらしい美矢は、ヘッドフォンを外し、ペットボトルの水を口に含み、休むことなく別室のブースへと入った。
「少し休憩挟んでも良いよ?」
「大丈夫。多分、今入っちゃった方が気持ち乗ってるから行ける気がする」
真剣な、鋭く光る真ん丸の瞳は、自身の言葉から生まれた楽曲の言葉たちに支配されていて、いつもの円くてやわこい空気感はない。
ずっと一緒にいたような勘違いをしていたけど、まだ出会って1ヶ月と少し。僕の知らない18年と数ヶ月、美矢はもしかしたらこっちの顔をして生きていたのかもしれない。
ぼやぼやしている間にレコーディングは始まる。
いつもは穏やかに幸せそうに、愛を語らう美矢の歌声は泣いているみたいで、心が痛くて痛くて、ぎゅ、と心臓の上に被さるプルオーバーを掴んだ。
形のないはずの心がぐちゃぐちゃに具現化していくみたいにシワが生まれ、だけど冷たくない、闇の中からこっちへ来るなと手を伸ばす美矢の熱い歌声が、何度も僕を押し返す。
「憑依型、だねぇ。やっぱりとんでもない化け物だ。そう何度もレコーディング出来る音じゃない。……絶対、最高の作りにしてやるから」
睨みつけるように聴き入る優の視線の先には、眉をゆがめ、今にも泣きそうな顔の美矢が、思いの丈を歌声に乗せている。
言葉に上手く想いが伝えられない彼女の、今の思いの丈が丁寧に、丁寧に拾われているように思えた。
「少し休憩挟んでも良いよ?」
「大丈夫。多分、今入っちゃった方が気持ち乗ってるから行ける気がする」
真剣な、鋭く光る真ん丸の瞳は、自身の言葉から生まれた楽曲の言葉たちに支配されていて、いつもの円くてやわこい空気感はない。
ずっと一緒にいたような勘違いをしていたけど、まだ出会って1ヶ月と少し。僕の知らない18年と数ヶ月、美矢はもしかしたらこっちの顔をして生きていたのかもしれない。
ぼやぼやしている間にレコーディングは始まる。
いつもは穏やかに幸せそうに、愛を語らう美矢の歌声は泣いているみたいで、心が痛くて痛くて、ぎゅ、と心臓の上に被さるプルオーバーを掴んだ。
形のないはずの心がぐちゃぐちゃに具現化していくみたいにシワが生まれ、だけど冷たくない、闇の中からこっちへ来るなと手を伸ばす美矢の熱い歌声が、何度も僕を押し返す。
「憑依型、だねぇ。やっぱりとんでもない化け物だ。そう何度もレコーディング出来る音じゃない。……絶対、最高の作りにしてやるから」
睨みつけるように聴き入る優の視線の先には、眉をゆがめ、今にも泣きそうな顔の美矢が、思いの丈を歌声に乗せている。
言葉に上手く想いが伝えられない彼女の、今の思いの丈が丁寧に、丁寧に拾われているように思えた。


