「起きたら夜中だったんですけど」
「ごめんって。すっかり忘れて寝ちゃった。僕もそう若くないから」
翌朝起きると、リビングでベーグル片手に機嫌悪そうにぶつくさ呟く美矢にじっとりと睨まれる。
30分後に起こして、と言われていたのにお酒1杯で気持ち良くほろ酔いになった僕は、さっさと作業に戻った優を見送り、慣れた流れでシャワーを拝借し、そのまま良く使わせて貰っていた部屋でぐっすり寝て今に至る。
申し訳ないことに美矢をリビングに放置したまま。
「はいはい、朝ご飯済んだらレコーディング前に喉ならしで弾き語りねー」
「すぐるん昨日の服のままなんだけど、もしかして一徹?」
「ああ、よくあることだから気にしないで。ボクショートスリーパーだから」
よく食べてよく寝る生活が当たり前の美矢にとって、作業を始めたら止まらなくなる優はまさしく未知の生物なのだろう。
多分そのまま作業場の硬い皮のソファーで3時間ほど寝て全快したであろう優は、ぎょっとする美矢にヘラヘラ笑うとすたすた、とシャワールームへ向かって行った。


