「さあて、じゃあ早速始めますか?」
さっきまでのちゃらけた雰囲気はどこへやら。楽曲提供を手がけるプロの顔へと変えた優は、なんだかとても、身体中にトゲを纏い、イガイガしているように見える。
その気迫に、目を輝かせていた美矢もぎゅ、と口をへの字に固めて頭を下げた。
「よろしくお願い……す!」
「よろしく。突然現れた人気配信者の『旅猫少女』と音楽プロデューサー『橋本優』のコラボ、バズる匂いがするねぇ」
つい先日まで自分のためにギターを握っていた美矢が、誰かに想いを発信するために変わろうと、殻を破ろうと覚悟を持って進んでいる。
僕にできることはこれ以上ないかも、なんて思ってそっとプレハブ小屋から離れようと1歩後退したその時、僕の腕は柔らかな丸みを帯びた小さな手と、細長い赤い爪の手にがっしり掴まれる。
「ちょっと、手伝うって、言ったのに」
「とらちゃん逃がさないよ。ちなみにボク今また作詞プチスランプだから頼りにしてるよ」
……どうやら逃げられないらしい。どうしていつも、僕は自分を捕まえて逃がさない人ばかり好きになってしまうんだろう。
さっきまでのちゃらけた雰囲気はどこへやら。楽曲提供を手がけるプロの顔へと変えた優は、なんだかとても、身体中にトゲを纏い、イガイガしているように見える。
その気迫に、目を輝かせていた美矢もぎゅ、と口をへの字に固めて頭を下げた。
「よろしくお願い……す!」
「よろしく。突然現れた人気配信者の『旅猫少女』と音楽プロデューサー『橋本優』のコラボ、バズる匂いがするねぇ」
つい先日まで自分のためにギターを握っていた美矢が、誰かに想いを発信するために変わろうと、殻を破ろうと覚悟を持って進んでいる。
僕にできることはこれ以上ないかも、なんて思ってそっとプレハブ小屋から離れようと1歩後退したその時、僕の腕は柔らかな丸みを帯びた小さな手と、細長い赤い爪の手にがっしり掴まれる。
「ちょっと、手伝うって、言ったのに」
「とらちゃん逃がさないよ。ちなみにボク今また作詞プチスランプだから頼りにしてるよ」
……どうやら逃げられないらしい。どうしていつも、僕は自分を捕まえて逃がさない人ばかり好きになってしまうんだろう。