優の迎えの車に乗って、ペラペラ1人で喋るその高い声をBGMに、僕は窓の外をぼんやりと眺める。

美矢はお得意の人間観察モード発動中で、話半分で相槌を打たなければならないから、めんどくさいったらありゃしない。

昔のドラマで主人公が言っていた、心の中で山の手線の各駅の名前を呟いて、大きな駅に来たら相槌を打てば良い、なんていう教えは、優にはめちゃくちゃ効果的である。


「で?とらちゃん、そんな可愛くて若い子捕まえて島では白い目で見られてない?そんでもって昔から癖のあるのばっか好きになるね」

「ごほ!……ちょっと、違うから。しかも一言余計だし、君、自分のこと癖のある奴って自覚はあるんだね?……ってうわあ」


こいつも美矢に負けず劣らずゴーイングマイウェイな性格だから、思わず僕も余計な一言を口走ってしまった。


「何?2人って付き合ってたの?」


それを聞き逃してはくれなかった美矢は、すかさず取りこぼすことなくどちらに尋ねるでもなく声を発す。

それに対して「いやいやいやー」と手を左右に振った優は、更に言わなくて良い一言を投下した。


「完全にとらちゃんの片想いだよ。友達友達!何かないかとか心配なら起こりえないから安心して!」


お願いだから黙って欲しい。全部事実だから、恥ずかしくてこのまま車道に出てしまいたくなる。