僕は6つの時に父をを亡くし、その後母もすぐにこの島に僕を置いて行方をくらませた。
そんな僕に無条件の優しさを差し伸べてくれたのがこのりょーちゃん。当時は20代だった独身のりょーちゃんが、他人の子供の僕を育てるのは大変だっただろう。

この人はいつだって、果てしなく広がる大地のように温かく優しい。その温かさに慣れすぎてしまったのも、僕が本土からこの島に戻った理由のひとつかもしれない。


「ところでとら、どうしたその大荷物は?見慣れない子だなぁ」

「ああ、うーん、拾っ……た?というか、なんというか、珍しい案内者にぐいぐいと連れられて」


僕の背中で未だにすやすや眠る不思議な拾い物に、りょーちゃんも穏やかに眉を寄せ、体を寄せた。すると、そんなりょーちゃんと僕の間にするり、と入り込むその案内者。


「なああん、なあん」

「こいつ、クロミじゃないか。……まさか、人嫌いなこいつが?」

「うん。すごいファンタジーと遭遇した気分だよ、僕も」


まるで「この子を助けて」と必死で訴えるように鳴き続けるクロミに目が点になっていたりょーちゃんは、そっとクロミの頭を大きな手で包み込んだ。