美矢の骨格の小さそうなその肩には、おそらく話で推測するに、火事で負ったらしい火傷の跡が残っている。

「ほら、とらのその傷と、あたしのこれ、くっつけると多分」


そう言って、座っていた距離を縮めてピッタリくっつくと、僕の傷跡と美矢の傷跡が、ちょうどくっついて、上から見るとよくは分からないけど、ハートマークみたいな形を作り出していた。

美矢はそれ以上何も言わず、三日月の方を見上げた。出来上がったハートマークに寄り添うように、僕から離れずに。

君が愛おしいよ、美矢。君が生きて、歌って、食べて、元気に動き回る全てが。


「……月が、綺麗ですね」


そっと、美矢の凛とした美しい横顔に呟いた。かの有名な小説家、夏目漱石が残したとされる言葉だ。

もちろんそんな言葉の意味を美矢が知っているわけもなく、美矢は「なんで敬語?ウケる」なんてくすくす笑いながら僕を見上げた。


「あたし、三日月って大好き。満月も綺麗だけどね」

「僕もそうだよ」


知らなくても良い。届かなくても。僕が勝手に君を想ってるだけで構わない。こんなに人を愛おしいと思うのは、多分これまでもこれからも、君だけだと思う。

今日はどうしようもなく、月が綺麗な夜だ。