公開して3日目の夜『旅猫少女』のSNSに1件の引用コメントが付いた。今若者に人気の男性歌手からだった。

『今までプロも素人も色んな人がカバーしてきたの見たけど圧倒的すぎる。この方ナニモンなんや……』

この引用コメントが瞬く間に拡散され、動画も急上昇に並んで一気に登録者数が増えた。


「まあ、ありがとう。結果的にケンゴの学費問題に宣言通り少しは貢献出来そうだし、よかったのかな?」

「あはは、律儀だな、君は。……まあ、この先不定期に美矢が弾き語り動画上げても、朝イチの縁側の特等席は、誰にも譲らないけどね」


あまりにもドライな反応な美矢に、彼女の歌がいかに贅沢であるか、それを1番独占しているのが自分だと誇示したくて言ったひと言に、言った後に恥ずかしいひと言だと気付いてハッとなる。

美矢を見ると、まん丸の三白眼をじっと動かさずに僕を見て、気持ち、耳を赤くしていた。


「とらってたまに恥ずかしい。……あたし、とらがギター弾いてるとこも見たい。ずるい。だって、ほんとは弾けるくせに」


そして、ポロリと小さく零した美矢の本音に、赤い耳可愛いな、なんて思ってた僕の心臓が少し、ひりついた。