しぱしぱ、と瞬きしてはてなマークを浮かべるような顔をしてみせると、ケンゴは更に盛大なため息。


「こじろうには絶対見せてやんないけど、弾き語り前のカットした会話に全て詰まってるんだもんねー」

「え、何その気になる言い方。見せてよ」

「ダメでーす!」


この年相応の、やんちゃそうであどけない顔をする少年が、あんな動画を作り上げた人物だなんてだれが思うだろう。

言うだけ言ってりょーちゃんの元へかけて行ってしまったケンゴを見送り、僕は視線を大きな鍋で素麺を今まさに煮ようとしている美矢へと移した。

あの物言いだと、美矢と恋バナでもしたのかな?そういう話はしたことがなかったけれど、もしかしたら、島の外に恋人がいるのかも。

美矢が弾き語ったりあの曲みたい。
ゆら、ゆら。心臓が揺れる。泣くことは無いのに涙腺が揺らぐ。

好きだと気付くと、知らないことが怖くなる。君を知りたい。いてくれるだけで穏やかだった心が、切なくてかき乱される。