放課後、諸々の当番が無かった僕は、明日の準備や事務作業をサクッと済ませると、いつもより早く帰路へとつけた。


日に日に、陽が落ちるのが早くなっている気がする。

外は夏の終わりの匂いが漂っている。どんな匂いか説明するのは難しいけれど、涼しくて、優しくて、悲しくないのに少しだけ切ないあの匂い。


自転車のペダルを漕いでぶつかる風がだいぶひんやりしていて、体が気持ち良い。

今日は何だか口当たり優しいお酒が飲みたいな。りょーちゃん付き合ってくれるかな。
なんて思いながら家路をふわふわ進んでいると、少し先に、見慣れた2人組がいた。

6限目ケンゴと会話してから2時間くらいだろうか、2人もちょうど帰りみたいだ。


本人より大きいようにも見えるギターのハードケースを持った美矢は、カーキ色のウエストに絞りのあるカットソーに、生地の柔らかそうな同じ色のワイドパンツを履いていて、シンプルなのに不思議とオシャレだ。

隣のケンゴは大きめの古着の柄物のシャツにスキニーを合わせていて、なんだか、オシャレな学生カップルみたいにも見える。

先に僕に気づいたのはケンゴの方で、笑顔で僕に手を振ってる辺り、存在を歓迎してくれてはいるようだ。