こっちを見て。







――「すごいよ宗くん!集客力ハンパないよ!」


「宗司の毒舌っぷりに怒って帰る人もいたけど、女子の数は多かったな!」




午前の部が終わって少しの休憩時間。

陽葵と野口は嬉しそうに俺の背中を叩いてくる。


痛ぇよ。




「やっぱり宗司に客寄せやってもらって正解だったな」


「うんうんっ。宗くんかっこいいもんね!」




キラキラした無邪気な笑顔を向けてくる陽葵。


……ふん。



「午後班も帰って来たし、俺達も文化祭楽しむかぁ」



うーんと伸びをしながら野口はそう言う。



……結局、俺は陽葵に意識させることも、告白することも出来ていない。


文化祭を一緒に回ろうって、誘えてすらない。



……はぁ、何してんだ俺は。

このままじゃあ、のうのうと松川が陽葵にまた告白してしまう。


いいのかよ、それで。




「行こーぜ宗司」


「……」




無言の俺に、野口は「宗司?」と首を傾げる。



……このまま俺が何もしなかったら、


本当に陽葵と松川は付き合ってしまうかもしれない。


俺が何かをしても、結果は変わらないのかもしれないけど。


ただ俺は、そう簡単に陽葵を諦められそうもない。