「ね。答えてよ」


空き教室の壁に押し付けられ、顔の横には腕、目の前にはどアップの男の人。


……どういう事態だろうか。


「あの」
「イエスかノー、それ以外は聞こえないな〜」
「じゃあノーです」
「……なんで?」
「いやだって、その……」


険しい顔で詰め寄ってくる男の人に少し、ビビってしまう。


「彼氏、いるんで」


その言葉に、男の人は手を緩めた。
正確にいうとびっくりして手が緩んでしまったんだと思う。
私はその瞬間に腕をすり抜けて、空き教室の扉を開ける。


そうなる気持ちもよくわかる。
実際、こんなサバサバした女に彼氏がいるなんて信じられないだろうし、私だって信じられない。


私は丁重に扉を閉めて昇降口に向かって歩きだした。


実際、昨日できたとこだし。
いや、私だって本当に告白されると思ってなかったんだよ。