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暗い部屋の中に、キャンドルのオレンジ色だけが妖しく揺れる。


鍵がかかっている引き出しから1冊の手帳を取り出した。


大切にカバーがかけられた、それ。


小さな頃から変わらない丸っこい字で綴られている日記。


『信じてもらえない私なんて、価値がない』


それが最後のページだった。いくら捲ってももうあの子の文字はない。


最後がそれだなんて、あまりに酷い。


それと同時に自分にも苛立つ。あの子が苦しんでいたことなんてまるで知らずに、のうのうと生きていた私の罪もまた重い。


きっと何度も私に相談しようとして、だけどこの境遇が私たちを遠ざけた。


何度だって思う。もう一度あの子に会えたら、絶対にその手を離さないのに。

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