「動画送るタイミング、バッチリだったよ」


そう、あのとき。瞬に送信者不明の動画を送り付けたのは目の前にいる紘斗だった。


彼の手には痛々しい殴り跡。尤も、殴ったのは彼なのだから心配するのはお門違いなのだけれど。


私は彼の右手を包んで、擦れた指の付け根をそっと摩った。


2人分の恨みを込めて殴ってくれた拳。


「手首、跡残ってる」


掴まれている私の手を見ながら、紘斗が小さく呟く。


長袖の隙間から見えてしまったあの夜の名残。紘斗はやるせないような、悲しいような顔をしていた。


「大丈夫だよ。こんなのすぐ消える」


それに彼が私の分までアイツらを殴ってくれたから十分だった。最後まで、されたわけじゃないし。