「來、おはよう」


来ていたならチャイムを鳴らせばいいのに。彼なりの気遣いなのか。


「ああ、おはよう」


私の姿を見て、少しホッとしたように顔の強ばりを緩めた。


もっとやつれていると思った?目の下のクマとか書いてきた方が守ってあげたくなる女を演出できたかしら。


「沙耶の、ことだけど」


私と2人で話したかったのか、ゴツいバイクを乗らずに引いて、らしくもなく私たちは並んで歩いていた。


いきなり触れられたあの夜の話題に、一つ心臓が大きく音を立てる。


さあ、どっちだ。彼はどっちを選んだ?


「アイツに話を聞いた」


重く、だけどするりと口にされたそれに、私は再び來の顔を凝視する。