「來、あのね…」
「今は何も言わなくていい」
キツく締められた手の縄は、なかなか解けないようだった。
擦れて痛い感覚なんてもう無かった。
「違うの、聞いて」
それでも黙らない私に來が視線を向けた。
「沙耶ちゃんが、いた…」
目から流れた涙が耳に触れて不快だった。
來は信じられないように私をジッと見て、私たちの間から音が消える。
耳鳴りが煩く感じるほどに静寂が痛い。
「沙耶が…?」
來がやっと口を開いたとき、するりと手の縄が解けるのを感じた。
一気に流れる血液がジンジンと熱さを伝える。
私は上半身を起こそうとする。遅れて気付いた來が背中に手を当てた。



