男たちは私を置き去りに、建物の奥へと逃げて行った。


一足遅れて水憐が駆け付ける。


「お前らはアイツらを追え!」


來が私を庇うように立ち、他の人に指示を出す。


良かった。流石にこんなボロボロの姿、多くの人に見られたくはない。


この場に私と來の2人になり、彼はすぐに私の肌を隠すように上着を掛けた。


苦しそうな、悲しそうな表情で私を見ている気がする。


私は仰向けで上を向いたま、瞳には何も映していなかった。


私に残されたのは虚無感、だけだった。


「華月…」


絞り出したように私の名前を呼び、戸惑いがちに手の拘束を解こうと触れる。


私を襲った男たちと大して変わらないくらい、來のことだって嫌いなのに。彼の手は温かかった。