「騒ぐなよ」
低い男の声と同時に、私は辺りを囲まれた。
その男たちが手早く口を塞ぎ手を縛る。
ガタイのいい男に担がれ、為す術もなく私は車へと運ばれた。
相手に悲鳴をあげさせる暇もなくあっという間に車へ詰め込む。見事な犯行だわ。きっとやり慣れてるんだろう。
何処かへ走り出した車内の後部座席で男たちに挟まれ、その汚い手が身体に触れる。
ネックレス、外してきて良かった。なんて呑気なことを考えていた。
こんな奴らの手に触れさせたくないもの。
体感5分も走らせていない車が止まったのは、廃れた工場のような。とにかく今は誰も近付いていなさそうな場所だった。



