幹部室に戻った私を美穂が心配そうな顔で出迎えた。 再び來の隣に座ると、無言でこちらを見る彼が心の中では気になっているのだと分かった。 「もう帰っちゃったみたい」 小谷沙耶と話したことは伏せる。彼女も私と話したことなんて彼らに言えないだろう。 私の言葉に、來が目を閉じた。 何も無かったことに安心したのか、この状況を煩わしく思ったのか。 それから先は、伊織がこの場に居ない以外は何も変わらず日常だった。 けれど確かに。私たちの辿る道は動き出していた。