担任の合図で教室に入り、皆んなの前で名前を告げる。


もっと騒がしいのかと思っていたけど、意外と人の話を聞いてくれるようだ。


いや、そもそもまだ全員が出席しているわけじゃないからなのか。


空いている一番後ろが私の席になった。


クラスメートの間を通りながらその席に向かう途中も、不躾な視線が刺さる。


それを見ないようにしながら席に着くと、前の席の子が振り返った。


「私、野口美穂。よろしくね!」


大人っぽい顔立ちと高い声にギャップがある彼女。


人懐っこいその笑顔に、少しだけ警戒心が薄れそうになる。


そんな弱い心を振り切って、私は無垢な笑顔を浮かべて見せる。