下から來の切れ長な目が私を見つめる。それにはまだ敵意が無くて、不安そうに揺れていた。


「初めからこの日の為だったの。貴方たちを仲間だと思ったことなんて無い。大嫌いなのよ」


私の告白に伊織が乾いた声で笑った。信じた自分が馬鹿だった、とでも言いたげな。


誰も1歩も動かない。ただ事の成り行きを見守っていた。


実際のところは、今起こっていることを飲み込めていないだけかもしれない。


「さっきの話の続きをしよう。かつて水憐の姫だった、岸飛鳥の話」


一見何の関係もなく思える話題の転換に、分かりやすく彼らは戸惑っていた。


來、そして晟也が眉をひそめるのが分かる。


「貴方たちが捨てた飛鳥は、私の家族だった」