どうせ彼は女の子に抱きついて欲しいだけだろう。


私にはそんなサービス精神はない。


それに下心込みだとしても、そこそこ私のことを気に入ってくれている晟也よりも今は來と仲を深めたかった。


「振り落とさないでね」


來からヘルメットを受け取りながらそう言うと、初めて彼は私に向けて笑った。


「安心しろ」


自分もヘルメットを被り、バイクに跨った彼の後ろに乗る。


バイクに乗るのは初めてで、思ったよりも不安定で少し怖い。


「腰に手、回せ」


彼にしがみつくなんて屈辱的なこと、したくなかったのに。


両手を微妙に浮かせたまま固まっていると、その手を來がグイッと引き寄せた。