上田さんは酷く悲しんでいた。何百人と育ててきた内の1人だけど飛鳥のことを認識して、その死を悲しんでいてくれる。
身勝手ながらも、私はそれが嬉しかった。
私と紘斗以外にその死を覚えていてくれる人がいることが、この世界との繋がりを見せてくれたようで。
「飛鳥は、私を置いて1人で逝ってしまった」
真冬の夜、私は走っていた。
その日は雪が降っていた。それなのに高い位置から月が姿を見せていて、妙に幻想的な光景だった。
だけど私は空を見上げる余裕もなく、一心に足を走らせていた。息が上がっても、どれだけ疲れても体に鞭を打ち。速く、速くって、病院に向かって。



