復讐の華


視界に映る範囲には人の姿が見当たらなかった。


來たちが着いてから時間はそれ程経っていない。それにバイクをここで置いたということは必ず近くにいる筈だ。


ひっきりなしに通っていた電車が丁度いなくなる。それによって辺りは静かになった。


そのとき、声が聞こえた。來の声だ。


探るようにそちらに視線を向ける。そこには窪みがあった。死角になってここからではその中が見えない。


逸る心臓を抑えて、私は慎重に足を進めた。


息まで止める必要ないのに無意識のうちにそうして、私はさながら泥棒のように窪みの奥を覗き込んだ。


「…っ!晟也!」


あれほど気を使っていたのに、晟也の姿が視界に映った瞬間、そんなことは忘れて。