小谷沙耶のときは叩かれるのを止めたけど。今此処で彼女に叩かれたら、彼らに同情して貰えるかな。
同情というのは1番人の心に深く根付いて、正常な思考を奪う厄介なものだ。
彼らとの関係を1歩進める為なら私の頬くらい捧げたっていい。
だけど、覚悟した痛みは一向に襲ってこなかった。
振り落とされた右手が何かに阻まれたように止まる。
「誰を叩こうとしてるか、分かってんのか」
來だった。タイミング良く駆け付けた來が彼女を制する。
険悪な雰囲気だった私と彼女の姿を見て、水憐メンバーが來たちを呼ばない筈が無かった。
「離してよっ」
力で敵う訳ないのに、女は逃れようと必死で暴れる。



