「知らないでしょうけど晟也にはね、忘れられない人がいるの。だからアンタのこともどうせ遊びよ」
勝ち誇ったように言う。
彼女は気付いていないのか。それはつまり自分をも乏しめているということに。
自分も、それに利用されていただけだと安易に認めているのと一緒だ。
「遊びだったのは、あなただけじゃない?」
何度言っても言い返す私に、彼女の怒りは最高潮だった。
ああ、やってしまったな。彼女の怒りの導火線は全て燃えてしまったようだ。
女が手を振りあげた。
全く、小谷沙耶といいこの女といい。図星を突かれたら叩くしか芸がないのね。
それとも叩く振りをすれば私が身を引くとでも思っているのか。



