本能だ。彼の頭の何処かにある記憶が、微かにそれを呼び覚ました。
昂る気持ちを隠すのが大変だった。
ここで失敗したら今までの準備が台無しになってしまう。
私は少し恥ずかしそうに笑って、彼の目を真っ直ぐに見た。
「私も…、もっと知りたいな」
風で髪が揺れる。
その髪の隙間から、彼が私を見つめているのが分かった。
第一関門、突破だ。
「やったー!倉庫だと男しかいないからつまんなかったの」
美穂が私に近づいて来て、嬉しそうに抱き付いた。
「もう呼び捨てでいいよね?改めてよろしくね、華月!」
「うん、美穂」
きっと今の私は満面の笑みを浮かべていることだろう。



