「飛鳥もさ、」


前触れもなく声にされたそのワードに一気に心臓が大きく音を立てる。


どうして今その名前を呼ぶの?


私の大切な人が飛鳥だってこと、気付いていた?いやまさか、それは無いか。だとしたらここまで引っ張る意味が分からない。


「あ、飛鳥って水憐の前姫の。覚えてる?」


取り繕うように言われたそれに、心から安堵する。


彼らの認識では私と飛鳥は何の繋がりもない、元姫と現姫というだけなのだから。疑われる理由もないか。


「覚えてるよ」


「飛鳥にも、私が付いて行くからお見舞いに行けって言われたんだ。でもその約束は守られずに、飛鳥はいなくなった」


そうなんだ…。飛鳥も私と同じことを彼に言っていたんだ。