それらがまだ出来る伊織が、自分が傷付きたくないが為に現実から逃げていることが許せなかった。


「だから病院に行って。会えなくなる前に」


まだ驚きに開かれた目を、再び地面に戻す。


私のカミングアウトに衝撃を受けたのか、両手を固く握って暫くの間何かを考えていた。


いつの間にか、雨は止んでいた。雲の隙間から光が差し込む。


地面の水が反射して、キラキラと眩しかった。


「一緒に行ってくれないか?」


縋るように言われたそれに驚きながらも、いいよと頷く。


「絶対だぞ」


「うん、分かった」


妙に念押ししてくる伊織の顔は、憑き物が取れたように少しだけスッキリして見えた。