「…怖いんだ。器具に繋がれて目を閉じているレナを見てしまったら、この現実を認めないといけないから」
これが伊織の純粋な本音。
弱々しく声を震えさせているのは、3年前に彼女を失った彼の姿だろうか。
時間は無限じゃない。いつ目を覚ますのか分からないのと同様に、いつ命を落とすかも分からない。
もしかしたら自分がこの帰り道、事故に遭う可能性だってある。
「私の大切な人は、自殺したの」
隣に座る伊織が息を呑むのが分かる。
こんな話はするつもりじゃなかったのに。
ウダウダと昇華されない悲しみに泣いている伊織が鬱陶しくて。
私はもう二度とあの子には会えないのに。肌に触れることも、姿を見ることも出来ないのに。



