「彼女は…?」
「意識不明。まだ目を覚ましていない」
伊織は込み上げてくる感情を抑えるように目を瞑った。
こうして3年もの間、一人自責の念に苛まれ、その苦しみを一身に背負ってきたんだ。
残された者たちがどれだけもがいたって着実に時は進むし、周りの人も忘れていってしまう。
自分だけがそこから動けなくて、だけど時間は過ぎて。
そんな矛盾に体を拗られ、狂ってしまいそうな。
伊織の抱える苦しみは痛いほど分かった。
私はそれに負けて、狂ってしまったから。
「お見舞いには行ってるの?」
「行ってない」
淡々と言葉を返す伊織は悲しみを誤魔化そうとしていた。



