復讐の華


私は黙って次の言葉を待っていた。


「幼なじみで、彼女で、家族みたいな。唯一の存在だった」


似てる、と思った。


私が大切な人を失ったという話をしたから、伊織もこれを話す気になったんだ。


シンパシーを感じて。


そのシンパシーは、皮肉にもあなたたちが原因で生み出されたものだけど。


「失ったって、どういうこと?」


「3年前の、今日。レナはあそこで事故にあったんだ。俺と喧嘩して、別の方向に歩き出した直後だった」


目の前で彼女が轢かれるのを、見たんだ。


その状況を想像してしまう自分に嫌気が差す。


喧嘩した後というのが彼の抱く後悔に拍車を掛けているんだろう。