「あ、ごめんこんな話…」
慌てて話を切り上げる。
彼は少し目を見開いてボソッと言った。
「俺も同じだ」
「え?」
同じって、何が?
彼を見る私の視線に我に返ったように、数回瞬きをする。
「あ、いや…」
私から顔を背けて深く息を吐いた。
意味深な言葉だけ言っておいて、後は誤魔化す気か。それを見て見ぬ振りする程私はお人好しじゃない。
「伊織の話、聞かせて」
彼へ近付く糸口がそこまで見えている。
私を拒絶する理由。ある瞬間に見せる翳り。
ただ知りたかった。同じだと口にした理由がそこにあるならば。
何を考えているか分からない無表情で、遠くの地面を見つめる伊織。



