近くにあった屋根付きのベンチに、二人並んで座る。
下校中の小学生が仲良くお喋りをしながら、私たちが座る前を歩いていた。
その子たちに、私は懐かしい記憶を思い出す。
ああやって黄色い帽子を被って、飛鳥と毎日一緒に帰っていたな。
口喧嘩した日だってどちらも1人で帰ることは考えずに、無言で隣を歩いて。
私たちには何も無くても、互いがいた。
寂しい夜も飛鳥がいたから乗り越えられた。
「私がここに来た理由はね、大切な人を失ったからなの」
思い出してしまった淡い記憶に、気持ちが緩んでそんなことを口走った。
彼が興味を持ったようにこちらを見るのが分かる。



