素直に興味が湧いてきた。
「じゃあいっそのこと2人で濡れる？」
傘を下ろすとパラパラとした雨が顔にかかる。
隠れている太陽が雲を白く照らしていた。
この雨が全てのしがらみを流れ落としてくれればいいのに。
「おいっ、何考えてんだよ。自分から濡れにいくことないだろ」
驚いた顔をして、慌てて傘を掴んだ伊織は私にそれを掲げた。
伊織だって、雨の中突っ立っていたのによく言う。
もはや傘を差す意味が無いほど既に濡れているのに、2人で傘に収まるこの状況が可笑しくて、笑いが込み上げる。
声を出して笑う私を見て、伊織もつられて笑っていた。
「何処かで雨宿りしようよ」
私の誘いに仕方ないと言う風に一つ息を吐き、隣に並んで歩き出した。
