本気で私に、助けを求めてる?
それとも救える筈がないと冗談半分で言ってみたのか。
「私にだって話を聞くくらい出来るし、こうやって傘も差してあげられる」
そう言って笑顔を浮かべた私の顔を、伊織は真顔でジッと見る。
最初から邪険に扱われてはいた。それでも少しは親しくなれたと思っていたんだけど。
伊織にとってはまだまだ信頼出来ない対象か。
「それで自分が雨に濡れたら意味無いだろ」
そう言って傘を私の方に戻した。
小さい折り畳み傘だ、2人で入るのには無理がある。
伊織に寄せていた傘に、私の肩が入り切っていないことに気付いていたんだ。
私を歓迎していないのに、冷たく扱い切れない伊織が何を抱えているのか。



