地面を見つめていたさっきも、雨から守られている今も。伊織は何かに傷付いているように見えた。
自ら雨に濡れにいっているようで、それが愚かにも自分の姿と重なって見えた。
「大丈夫って、何が?」
薄く笑った彼は、明らかに私を拒絶していた。
何も知らないのに踏み込んで来るな、と。
「雨の中で棒立ちしてるなんて、何かあったんじゃないの?」
自分1人では発散できない苦しみに、もう限界なのではないだろうか。
だから、雨に打たれてその悲しみを流そうとしたんでしょう?
「大丈夫じゃないって言ったら、助けてくれんの?」
真っ黒なその瞳は、何を考えているのか私には分からなかった。



