復讐の華


弱く降り続ける雨が彼の制服を色濃く染めていく。


3度くらい青信号を見送っただろうか。


彼が顔を下に向けて項垂れたと思えば、此方に向かって歩き出した。


前を向いた彼と視線がぶつかる。


ここで戸惑ってしまったら余りに可笑しい。たった今そっちに向かって歩いていた風を装わなければ。


私は伊織へ駆け寄った。


「傘忘れたの?びしょ濡れだよ」


本当はあなたが雨に濡れていたのを眺めていたなんて悟られないように。


飛鳥が私にしたように、私は伊織に傘を傾けた。


「…ああ」


差し出したハンカチを素直に受け取って、ポタポタと雫が垂れる髪を拭った。


「大丈夫?」