あの子の日記には水憐のことしか書かれていなくて、どれ程彼女にとって水憐が大切だったかが滲み出ていた。
「…思い出した」
飛鳥のことを悲しんで黙っていたのかと思うと、下を向いていた顔を上げて今度は私に目を合わせた。
「なにを?」
「飛鳥との会話。あの子は、大好きな人がいるって言ってた。彼氏かなって思ってそれ程深く記憶に残らなかったけど…」
真っ直ぐに合う視線が私に絡み付いて逸らすことを許さなかった。逃げたい。このままここに居てはいけないと、第六感が訴えていた。
彼女が何かを連れてきそうで。
心臓をグッと掴まれたように息苦しい。
「確か名前は、カズキだった」



