「ここ、滅多に人来ないから」
そうだろう。LL教室なんて授業でも入ったことないのに、この学校の生徒が使うわけない。
まさに聞かれたくない話をするのにはピッタリな場所だった。
近くにある椅子に座った彼女の向かいに私も座る。
「篠谷さんとずっと話したかったんだけどいつも美穂か水憐の人といたからタイミングがなくて」
「華月でいいよ。話したいことって?」
「じゃあ私のことも美波で。小谷沙耶のこと」
何気ない会話の中にするりと口にされたそのワードに、お弁当をつつく手が一瞬止まる。
小谷沙耶が居なくなってから、1ヶ月くらい経っただろうか?
そんな長い間、チャンスを伺いながら疑惑を深めてきたんだ、彼女は。



